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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

「昨日、玉川で一緒にゴルフをしたジュリアがそうだったか。……」

そこで課長はもどかしそうに叫んだ。

「キャバレーの主人オトー・ポントスはいつかの夜のキャバレーの惨劇で、ジュリアの殺人を見たのが、運のつきだったんですネ。ジュリアは夜陰に乗じてポントスの寝室を襲い、まずナイフで一撃を加え、それからあのレコードで『赤い苺の実』を鳴らしたんです。ポントスはジュリアの独唱を聞かせられながら、頸部から彼女に血を吸われたんです。それから秘密の壁に抛り込まれたんですが、あの巨人の体にはまだ血液が相当に残っていたため、暫くは生きていた――というのですネ」

検事は黙々として肯いた。

「ではこれから、逮捕に向いたいと思いますが……」と課長はいった。

「よろしい。――が、いま時刻は……」

「もう三分で午後九時です」

「そうか。ではもう三分間待っていてくれ給え、儂が待っている電話があるのだから」

大江山課長は、後にも先にも経験しなかったような永い三分間を送った。――ボーン、ボーンと遠くの部屋から、正九時を知らせる時計が鳴りだした。

「遂に電話は来ない。――」と検事は低い声で呻くように云った。