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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

なぜなら口笛は、警官の制止の声にも応じないで、平然と吹き鳴っていた。墓場のような暗黒と静寂の中に……。

「こら、止めんか。止めないと――」

と大江山課長が火のようになって暗がりの中を進みいでたとき、呀ッという間もなく、足許に転がっている大きなものに突当り、イヤというほど足首をねじった。その途端に、足許に転がっていたものが解けるようにムクムクと起き上って、激しい怒声と共に格闘を始めたから、捜査課長は胆を潰してハッと後方へ下った。

「青竜王はここにいるぞッ」と格闘の塊の中から思いがけない声が聞えた。

「なにッ」

「痣蟹を早く押えて――」

雁金検事はその声に活路を見出した。

「明りだ、明りだ。明りを早く持ってこい」出口の方から、やっと手提電灯が二つ三つ入ってきた。

「そっちだ、そっちだ」

すると正面の太い円柱のあたりで、ひどく物の衝突する音が聞えた。それから獣のような怒号が聞えた。

「捕えた捕えた。明りを早く早く」

それッというので、手提電灯が束になって飛んでいった。

「痣蟹、もう観念しろッ」

まだバタバタと格闘の音が聞えた。するとそのときどうした調子だったか、室内の電灯がパッと点いた。