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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

私はまだ何も知らないんですが……」

「知らない? 知らないで済むと思うかネ。すぐキャバレー・エトワールの地下に入ってパチノ墓地を検分したまえ。その上でキャバレーの出入口を番をしていた警官たちを早速、伝染病研究所へ入院させるんだ。いいかネ」

ガチャリと、電話は切れてしまった。こんなに検事が怒った例を、大江山は過去に於て知らなかった。エトワールの張番がどうしたというのだろう。パチノ墓地というのは何のことだろう?

彼は狐に鼻をつままれたような気持で暫くは呆然としていたが、やがてハッと正気にかえって、急いで制服を身につけ短剣を下げると、門前に待たせてあった幌型の自動車の中に転がりこむように飛び乗った。

「オイ大急ぎだ。銀座のキャバレー・エトワールへ。――十二分以上かかると、貴様も病院ゆきだぞ!」

運転手は何故そんなことを云われたのか解せなかったが、病院へ入れられては溜らないと思って、猛烈なスピードで車を飛ばした。

キャバレーには雁金検事が既に先着していて、埃の白く積ったソファに腰を下ろし、盛んに「朝日」の吸殻を製造していた。そして大江山課長が顔を出すと、

「ああ大江山君、悦んでいいよ。