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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

儂たちはまた夕刊新聞に書きたてられて一段と有名になるよ。全く君の怠慢のお陰だ」

鬼課長はこれに応える言葉を持っていなかった。それで現場検分を申出でた。検事は点けたばかりの煙草を灰皿の中へ捨てながら、「儂は君が検分するときの顔を見たいと思っていたよ」と喚いたが、そこで急に声を落して、日頃の雁金検事らしい口調になり、「全く、君のために特別に作られた舞台のようなのだ。しかし先入主はあくまで排撃しなけりゃいかん」

妙なことを云われると思いつつ、課長は雁金検事の先に立って、地下の秘密の通路から、地底に下りていった。地底には無限の魅惑ありというが、その魅惑がよもやこのさんざん検べあげたキャバレーの地底にあろうとは思いもつかなかったことであった。――崩れかかったような細い石造の階段が尽きていよいよ例のパチノ墓穴に入ると、そこには急設の電灯が、煌々と輝いて金貨散らばる洞窟の隅から隅までを照らし、棺桶の中の骸骨も昨夜そのまま、それから虚空を掴んで絶命している痣蟹仙斎の屍体もそのままだった。ただ昨夜の場面に比べると、竜宮劇場のプリ・マドンナ、赤星ジュリアと、それに寄りそって懐中電灯を照らしていた疑問の男とが、居ないところが違っていた。