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よろこばしきちしき
悦しき知識
深瀬 基寛
――停年講義(昭和三十三年九月十六日)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,972 字 · 33 页
とでも言いますか、科学――たとえば三角形の二辺が一辺よりも大とか、三角形の二辺の和は一辺より大なり……わたしら中学校で幾何を習った時に、馬鹿らしいと思った、なんや、と思った。しかしそんな解り切ったような定理も定理として極めておかないことには、それから先へ一歩も進めない。で、科学というものは、こういう明白な、巨視的な、明白というか非常にこうはっきり見えるような、ま、「巨視的出来事」を対象にして、その、動かない、これなら動かない、もっと他に自明なことがあるかも知れんけどこれだけは決めとかんと困る、次の研究ができない、そういうことから入って行ったものでありますが、最近は、ずっと顕微鏡的な、非常にこまかい、勿論この頃は電子だとかエレクトロンだとか原子核だとか電波だとか、いろんな事を取り扱うようになりました。つまり従来の科学はですね、科学は我々の五官によって触れうる経験を取り扱うとされておったものがですね、大体この頃エレクトロンだとか原子だとか、原子核とか電波とかいうものは、我々の五官に触れられないものなんです。そういう世界を取り扱うようになったんです。これは、科学自身のポジションが、こう廻り舞台のように廻転しつつあることだろうと思うんです。