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よろこばしきちしき
悦しき知識
深瀬 基寛
――停年講義(昭和三十三年九月十六日)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,972 字 · 33 页
という本を書いたんです。これは勿論カーライルの「陰気な科学」をふまえての話ですが、そんなら何のことが書いてありますかと言うと、実はこれは、陽気な科学とは、poetry だと言うんです。詩、だと言うんです。つまりこの悦ばしき知識というものは、詩から生れるんだ、poetry からくるんだ、joyful wisdom あるいは joyful knowledge というのは comes from poetry だということを言っているのであります。
ところが、大体、いつの時代でもですね、その時代に、その時代の、詩の弁護、defence of poetry というものが、英文学にはあるんであります。これは皆さんの中で英文学をやっていられる方はとっくに御承知と思いますけれども、ごく簡単な例をあげますと、古くはあの十六・七世紀の、シェイクスピアの時代、サー・フィリップ・シドニーという偉いもののふがおりまして、これは戦場で瀕死の手傷を負って、まさに息たえんとする時に、かたわらに倒れている戦友をかえりみて、この水は――一滴の水が残っていたんです、水筒か何かに――おれよりもお前の方がまだ必要だ、おれよりもお前が――両方とも死にかかってるんです――そう言って最後に末期の水を瀕死の親友に与えて息が切れたという、ものすごい武勇伝