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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
僕はじっと奥さんの異様に光る大きい目を見つめた。
「あたし何だか気味が悪くって、ほんとうのことを云うと、こんな心霊学の会なんか始めたのがいけないと思いますわ。えたいの知れない魂達が、この家の暗い所にウジャウジャしている様な気がして。あたし、主人に御願いして、もう本当に止して頂こうかと思うんですの」
「今夜はどうしてそんな事おっしゃるのです。何かあったのですか」
「何かって、あたし姉崎さんがおなくなりなすってから、怖くなってしまいましたの。あんまりよく当ったのですもの」
迂濶にも僕はそのことを全く知らなかったので、びっくりした様な顔をしたに違いない。
「アラ、御存知ありませんの。家の龍ちゃんがピッタリ予言しましたのよ。事件の二日前の晩でした。突然トランスになって、誰か女の人がむごたらしい死に方をするって。日も時間もピッタリ合っていますのよ。主人お話ししませんでして」
「驚いたなあ、そんな事があったんですか。僕ちっとも聞いてません。姉崎さんということも分っていたのですか」
「それが分れば何とか予防出来たんでしょうけれど、主人がどんなに責めても、龍ちゃんには名前が云えなかったのです。