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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
ただ繰返して美しい女の人がって云うばかりなんです」
龍ちゃんというのは、黒川博士が養っている不思議な盲目の娘で、恐らく日本でたった一人の霊界通信のミディアムなのだ。その娘は今に君の前に登場するであろうが、彼女が冥界の声によって、予め姉崎未亡人の死の時間を告げ知らせたという事実は、僕をギョットさせた。あのめくらが、いつかの日真犯人を云い当るのじゃないかな、という恐ろしい考えがチラッと僕の心を遏ぎった。
「それに、昨夜の事でしょう。祖父江さん、主人はただ怪我をしただけではありませんのよ」夫人は僕の方へ顔を近づけて、ギラギラ光る目で僕の額を見すえて、ひそひそと云われるのだ。「何か魂の様なものを見たのですわ、きっと。湯殿の脱衣室の鏡ね、あの大きな厚い鏡を、主人は椅子で以ってメチャメチャに叩き割ってしまいましたのよ。きっと何かの影がそこに写ったからですわ。尋ねても苦笑いをしていてなんにも云いませんけれど。そのガラスのかけらを踏んだものですから、足の裏に少しばかり怪我をしたんですの」
「では、今夜の会はお休みにした方がよくはないのですか」
「イイエ、主人は是非いつもの様に実験をやって見たいと申していますの。