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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
熊浦氏は黒川博士とは同郷の幼馴染だと聞いているが、現在では地位も、境遇も、性格もひどく違っている。黒川先生は前途の明るい官学の教授で、親から譲られた資産があって生活も豊かだし、人柄は女性的で如才のない社交家であるのに反して、熊浦氏はただジアナリスティックな虚名を持っている外には、地位もなく資産もなく、妻子さえない全くの孤独者で、僅かに著作の収入で生活しているのだ。性格も陰欝で厭人的で、広い荒屋に召使の老婆とたった二人で住んでいて、人を訪ねたり訪ねられたりすることも殆どない様な生活をしている。この心霊学会に出席するのが同氏の唯一の社交生活ではないかと思われる。
心霊学会の創立者は実を云うと黒川博士ではなくて熊浦氏であったのだ。熊浦氏の熱心と、同氏が発見した珍らしい霊媒とが、つい黒川博士を動かして、こういう会が出来上った。その珍らしい霊媒というのは、先にちょっと触れた龍ちゃんという盲目の娘のことで、三月程前までは熊浦氏の手元で養われていたのを、黒川先生が引取って世話をしているのだ。
熊浦氏の容貌風采は、変り者の多い会員の中でも殊更に異様だ。氏はいつも色のさめた、併し手入れの行届いた折目正しいモーニングを着用して、夏でも白い手袋をはめて、よく光った靴を穿いて、骸骨の握りのついたステッキをついて、少しびっこを