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あくりょう

悪霊

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页

青空文庫

僕も未亡人が美しかったという論拠には全く同感であった。僕は曽恵子さんの顔ばかりでなく、身体の美しさまで、まざまざと見せつけられていたのだから。それにしても、若し「織江さん」の魂が云った様に、会員の中に下手人がいるのだとしたら、あの美しい身体にむごたらしい血の縞を描いた奴は、あのか細い喉を無残に刳った奴は、一体この内の誰だろうと、三人の顔を見比べないではいられなかった。

「すると、僕達の内の誰かが、殺人者だということになる訳ですね」

無闇にスパスパと両切煙草をふかし続けていた園田文学士が、青い顔をして、少し声を震わせて、口をはさんだ。

「そうです、龍ちゃんが、気絶さえ、しなければ、犯人の、名前も、分ったかも知れん。併し、肝腎のミディアムが、病人に、なってしまっては、当分、『織江さん』の魂を、呼出す、見込がない。実に、迷惑な話だ。僕等は、お互に、疑い合わねば、ならん様なことに、なってしまった。どうだ、諸君、ここで、銘々の、身の明りを、立てて、サッパリした、気持で、別れる、ことにしては」

熊浦氏が提案した。

「身の明りを立てるというのは?」

園田文学士が聞き返す。