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あくまのでし
悪魔の弟子
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页
然し私にはそんな考えは絶対にありませんでした。私は決然として、あのあこがれの二条の白線の帽子を地に投げすて、校門を出たのでした。人は花見に浮れ、全寮の桜花はまさに春風に燃えながら散り狂う頃でありました。
故郷の親は突然の私の行動に驚いて、泣いて反省を求めましたが、私には最早何の未練もなかったので、再び学問をする気には全くなれませんでした。遂に親は怒って自分の手許に私を呼び返そうとしました。然し一旦、あなたの悪魔の哲学を教えられた私に、どうして土臭い故郷の土が踏めましょうか。私は断然之を断って、此の広い大東京の中をただあてどもなく暮しまわったのでした。
それから数年の間、私はあらゆる職業に身を投じました。或る時は雑誌屋に傭われて飜訳の手伝いをしました。或る時は、活動写真館に傭われてプロを作る役目をひき受けました。かくして私は、東京の隅から隅へとうろつき歩いたのです。
この間、辛じて私は食うだけのことをしていたのですが、その間にも常に絶やさぬものが二つありました。一つは酒、一つは催眠薬です。酒量が増すと同時に薬の量も増します。殊に私はすえ子を失った傷手を逃れるために、自暴自棄な生活をした結果、夜は殆どただでは眠れません。