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あくまのでし

悪魔の弟子

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页

青空文庫

十二

私が名を書かなかったために意外な結果を惹き起したのでした。

書き終った私は、もって居た一罎の薬をそのまま全部一度に呑みほしました。いとわしい此の世に最後のあいさつをしながら、木曽川の流れを葬いの歌ともききながら。

土田さん、私がこのまま死に得たら、どんなに私は幸福でしたろう。しかし私の罪業は之だけでは尽きなかったと見えます。

十二

私は其の時から直ちに滾々たる眠りに陥りました。何時間眠ったか、何日眠ったかそれは私には全く判りません。私が目をさました時、死ぬような頭痛と嘔き気に襲われながらあたりを見廻した時は、後で考えて見ると、木曽の×駅近くの警察署に居たのでした。

私がすえ子の所で、怪しい言葉を出してから、役人達は私を追って居たに違いありません。木曽の×村の宿屋は私の長い眠りに驚いて駐在所にでも訴えたのでしょう。

ともかく私は見知らぬ所で、苦しい眠りからさめたのです。さめてから後の私は実にみじめなものでした。

あなたは、催眠薬を少しでも呑みすぎた後の不快さを知っておられるでしょう。ところが私は二十日分ももしくはそれ以上の薬を一度に呑んだのです。私が生き甦ったのが不思議な位です。