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あくまのかお

悪魔の顔

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1930(昭和5)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,677 字 · 29 页

青空文庫

「併し芦名兵三郎でない事だけは確かだよ」

「エ? 本当かえそれは」

「本当とも。芦名が犯人なら、いくら何んでも自分を陥れる為にあんなに沢山証拠を揃えないよ。亜砒酸なんて馬鹿な毒薬を使ったり、自分の短刀で人を刺して、それを現場へ残して来たり、簡単な現場不在証明も作らなかったり」

「…………」

「だから、今朝僕が証明して釈放してやったよ」

「で、これから何うする積りなんだ」

「網を作って居るところだよ、大きい大きい網だ。僕が斯うして歩いたところが、呪文の網になるんだよ、分らないかね。ハッハッハハハ」

「…………」

全く何を言い出すかわかりません。千種は呆気にとられて、花房の顔を眺めていました。

「君にだけソッと言って置くが――、今晩何んとかうまく話をつけて、爺やの室へ泊めて貰い給え、面白い芝居が見られるよ」

「犯人が捕るのか」

「まアね、但し人に言ってはいかんよ、誰にも言ってはいけない、夫人にも、美保子さんにも、庄平君にも」

「…………」

千種十次郎の胸は期待に高鳴ります。

「わかったか、一度左様ならをして外へ出るんだ、そして、ホラ、此穴からそっと入るんだ」

花房一郎は足の先でソッと生垣の穴を指します。