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あくまのかお

悪魔の顔

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1930(昭和5)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,677 字 · 29 页

青空文庫

「…………」

花房一郎の説明を聴いて、あまりの恐ろしさに、美保子はヨロヨロと継母の腕に倒れかけました。

「お嬢さん、もう大丈夫です、あれで何も彼も解決したのです。ところで奥さん、この紐は誰のでしょう――」

「アッ、それは私のです」

美しい未亡人も、美保子を抱いたまま其場へヘタヘタと倒れそうになります。

今度は、千種十次郎が飛んで行って支えてやらなければなりませんでした。

「そうでしょう、――お解りですか奥さん、もう少しで貴女は、継子殺の嫌疑を受けるところでした。私もいろいろ悪人の型を見ましたが、この田庄平のように念入で冷血なのは始めてです。本当に天才的な悪人で、頭の良いところを見ると一種の変質者でしょう」

濤子未亡人と美保子の感謝を後に、二人は夜明けの街を丸の内へと引揚げました。

途々花房一郎は、千種十次郎の為に、斯う説明してくれます。

「亜砒酸の出所? 何んでも無いよ、田の道楽は動物学で、時々動物の剥製を作るから、亜砒酸は研究所へフンダンに用意してあるんだ。私はそれよりも、美保子さんに疑のかかるように仕組んだ手際や、石井氏の糖尿病を利用した恐ろしい悪智慧に驚いたよ。