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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
吉野 作造
「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页
しかるに墨西哥に移住した者は、労働者兵士等、皆妻子を有って居る者ではない。のみならず道徳上何ら守るところあるものではなかったから、忽ち土人と雑婚し、ために多くの混血児を生じた。今日いわゆる墨西哥人というのは、これら混血児の事である。しかしてこれらの混血児は、ただ両親の弱点のみを伝えて、道徳的品性においては最も劣って居るものである。これをかのピューリタンの輩が、人種の純潔を保ちつつその高尚なる理想を子孫に伝えたのに比すれば、もとより同日の談ではない。
かくの如く米と墨とは国民の値打において已に大いなる逕庭がある。従って墨西哥において憲政の運用に多少たりとも成功せんとせば、殊更国民の教養に尽力するという必要があるのに、建国以来同国の先覚者はこの大責任を切実に感じなかった。亜米利加の建国には、ジョージ・ワシントンの如き高潔なる人物があるのに、墨西哥の建国はイツルビーデという、自ら新大陸の那翁〔ナポレオン〕と称し、野心と虚栄と俗望とを包むに悪辣なる手腕を以てした一奸雄を以て始まって居る。これ墨西哥が紛乱に紛乱を重ねて、到底近き将来において憲政の運用に成功する見込なしとせらるる所以である。