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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず

憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず

吉野 作造

「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页

青空文庫

憲法の発布、国会の開設というものその事に、不当に過大なる期待をかけたということは、我が国でもそうであったが西洋でもまた同一、いわゆる東西その軌を一にしておったのである。西洋の或る国ではいよいよ憲法が発布になったというので、これを人民に知らすところの新聞号外は、翌日からパンの値段が半分に下がるとか、牛乳がただで飲めるとか書いてあったそうだ。約り非常に生活を楽にするところの一種天来の福音として憲法を迎えたのであった。これと同じような話が、明治二十二、三年頃の我が国にもあったことは人の知るところである。しかしながら単純なる憲法の発布、単純なる議会の開設は、それだけで以て直ちに人民の権利自由を完全に保障し、我らの生活を十二分に幸福になし得るものではない。制度そのものはそれだけでは決して吾々に実質的の利益を提供するものではないのである。これもとより明白なる道理である。果たせるかな爾後の経験は明らさまにこの道理を吾人に示した。けれども初め人々はこれに多大の期待を繋けたので、その期待の空に帰するを見るや、彼らは大いに失望した。しかして期待の大なりしだけ、また落胆は実に非常なるものであった。