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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず

憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず

吉野 作造

「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页

青空文庫

我々は憲政の運用に当って、憲法法典細かに定むるところの規定と相背いてはいけないが、更に進んでその規定の裏面に潜む精神に副うて居るかをも深く省察せねばならぬ。憲法法典の条項は法律学者にとってはなるほど唯一の大事な典拠であろう。しかし憲法政治の成果そのものを大事とする我々国民にとっては、条項よりも実はむしろその精神が大事なのである。もとより条項を離れて精神がないとも言える。しかし条項の活用もまたその精神をよく酌み取るにあらずんば、決して正しきを得ることは出来ない。これ今日欧米各国において、相当に完備せる憲法法典を有するに拘らず、その運用の得失について絶えず問題の起る所以である。憲法の未だ布かれざりし古にあっては、憲法を与えよというて天下の人は争った。憲法の已に与えられた今日においては、更にその精神に遵拠してこれを運用せよというて、天下の物論は依然として囂々たりである。憲政の前途もまた多事なりといわねばならぬ。

しからば憲法の精神とは何か。これは一概に論ずる事は出来ぬ。国によって必ずしも同一ではない。詳細の事は個々の憲法につきその条項を詳らかに研究し、またその制定の来歴をも明らかにして、初めてこれを知るべき問題である。