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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず

憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず

吉野 作造

「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页

青空文庫

顧みて我が国の状態を思うに、吾人は国民の準備未だ整わざるに早く憲政を施行したるが故に、今や破綻百出、経世の志ある者をして日暮れ途遠しの感を抱かしむるのである。が、しかしながら、今更針路を逆転して昔の専制時代に復ることも出来ない。しからば吾々はますます奮って改善進歩の途を講ずるより外致し方が無い。しかしてこれがためには、啻に政治家ばかりではない、実にまた教育家・宗教家その他社会各方面の識者の共同的努力に俟つこと極めて大なるものがあるのである。

同じく立憲政治のやや完全なる形式を備えながら、国民智徳の高いと低いとの差によって、憲政の運用上両極端の現象を呈して居るものは、北米合衆国と墨西哥〔メキシコ〕とである。この両国は新大陸において南北相隣して居るだけ、その対象の色彩が極めて著しい。北米合衆国は、いうまでもなく憲政の運用に最もよく成功し、物質的方面においても精神的方面においても、今日国運の興隆頗る目覚ましいものがある。一部の人は亜米利加の最近の政治は、国民中の多数を占むる労働者その他の下層階級の専恣に媚び段々に政治の質が下落したという。けれどもこれは全然誤りである。