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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず

憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず

吉野 作造

「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页

青空文庫

されば実際上に照らして見ても今日百般の政務を君主が単独に決裁し給うということは事実いずれの国にもこれを見ない。独逸皇帝ウィルヘルム二世陛下の如き近代稀に観る多才多能の御方でも、複雑なる政務の裁決には幾多大臣の智慧を藉りるの必要に迫られて居るではないか。されば絶対的の無制限の自由行動という事は、事実上これを望み得ない。よしこれを望み得ても、かくの如きは常に偉大絶倫なる且つ多才多能なる名君の相継いで輩出するという条件の許に、初めて弊害なく行わるるを得るものである。かく観れば、君主の行動が相当の制限の下になさるるということは、事実必要でもありまた望ましいことでもある。かくの如く立憲政治においては君主の大権は初めから制限を受くるものである。制限を受くるを可とするや否やはもはや問題ではない。もし問題となるものありとすれば、君主の大権がいかなる種類の制限を受くべきやという点にあらねばならぬ。即ち人民一般の意嚮に聴くという制限を受くべきや、または君側二、三者の意見に諮るという制限を受くべきやというような問題に帰する。しかるに一部の論者は、広く人民の意嚮に聴くは君主の大権に対する制限と観るに拘らず、しからざる場合には丸で君主大権の制限を説かないのは、甚だ片手落な議論であると思う。