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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
吉野 作造
「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页
制度の上で醜穢な手段の出来ないようにして置けば、最も正直に賄賂などに手を出さないものは恐らく人民であろうと思う。
なお予は更にいわゆる少数賢者の政治なるものは、その名美にしてその実弊害の頗る大なるものある事を指摘するの必要を感ずる。世人は動もすれば賢者は常に少数である。故に最良の政治は少数者の政治であらねばならぬ。これに反して多数者の政治はいわゆる衆愚政治に陥るという。これも一応は真理である。けれども少数政治は常に暗室の政治であるということを忘れてはならぬ。いかに立派な人物でも、他人の見ていないところではとかく過ちを犯し易い。閑居して不善をなすは独り小人の事ではない。君子といえどもその独りを慎む事を以て昔から最も困難なる修養としておったではないか。いわんや少数者の政治といっても、いつでも聖賢の如き君子人のみその局に当ると限らないにおいてをや。制度としては、どんな人物がその局に当っても悪い事の出来ないようにして置かなければならぬ。即ち悪い事のなし得る機会を作らないのが制度の眼目である。金を貪る機会が与えらるれば、神聖なる宮内大臣でさえも賄賂を取ったではないか。