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らんだのかるた
懶惰の歌留多
「文芸」1939(昭和14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,369 字 · 25 页
遊び疲れたヴィナスが森の奥の奥の冷い泉で、汗ばんだ四肢をこっそり洗っていると、あちらの樹間に、また、ついそこの草の茂みのかげに、神々たちのいやらしい眼が光っていた。
ヴィナスは考えた。こんなに毎日うるさい思いをするよりは、いっそ誰かにこのからだをぶち投げてあげようか。これときめた一人の男のひとに、このからだを投げてやってしまおうか。
ヴィナスは決意した。一月一日の朝まだき、神々の御父ジュピタア様の宮殿へおまいりの途中で逢った三人目の男のひとを私の生涯の夫ときめよう。ああ、ジュピタア様、おたのみ申します、よい夫をおさずけ下さいますように。
元旦。ま白き被布を頭からひきかぶり、飛ぶようにして家を出た。森の小路で一人目の男のひとに逢った。見るからにむさくるしい毛むくじゃらの神であった。森の出口の白樺の下で二人目の男のひとに逢った。ヴィナスの脚は、はたと止って動かなんだ。男、りんりんたる美丈夫であったのである。朝霧の中を腕組みして、ヴィナスの顔を見もせずにゆったりと歩いていった。「ああ、この人だ! 三人目はこの人だ。二人目は、――二人目はこの白樺。」そう叫んでますらおの広いみ胸に身を投げた。