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わがやのえんげい
我家の園芸
岡本 綺堂
「サンデー毎日」1935(昭和10)年6月10日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,666 字 · 8 页
郊外だけに、その生長はめざましく、あるものは七、八尺の高きに達して、それが白馬の尾髪をふり乱したような尾花をなびかせている姿は、わが家の庭に武蔵野の秋を見るここちである。あるものは小さい池の岸を掩って、水に浮かぶ鯉の影をかくしている。あるものは四つ目垣に乗りかかって、その下草を圧している。生きる力のこれほどに強大なのを眺めていると、自分までがおのずと心強いようにも感じられて来るではないか。
すすきに次いで雄姿堂々たる草花は、鶏頭と日まわりである。いずれも野生的であり、男性的であるこというまでもない。日まわりも震災直後はバラックの周囲に多く栽えられて一種の壮観を呈していたが、区劃整理のおいおい進捗すると共に、その姿を東京市内から消してしまって、わずかに場末の破れた垣根のあたりに、二、三本ぐらいずつ栽え残されているに過ぎなくなった。しかも盛夏の赫々たる烈日の下に、他の草花の凋れ返っているのをよそに見て、悠然とその大きい花輪をひろげているのを眺めると、暑い暑いなどと弱ってはいられないような気がする。
鶏頭も美しいものである。これにも種々あるらしいが、やはり普通の深紅色がよい。