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わがやのえんげい

我家の園芸

岡本 綺堂

「サンデー毎日」1935(昭和10)年6月10日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,666 字 · 8 页

青空文庫

目黒へ移ってから三年目の夏が来るので、彼岸過ぎから花壇の種蒔きをはじめた。旧市外であるだけに、草花類の生育は悪くない。種をまいて相当の肥料をあたえておけば、先ず普通の花はさくので、我々のような素人でも苦労はないわけである。

そこで、毎年慾張って二十種乃至三十種の種をまいて、庭一面を藪のようにしているのであるが、それでは藪蚊の棲家を作る虞れがあるので、今年はあまり多くを蒔かないことにした。それでもへちまと百日草だけは必ず栽えようと思っている。

私はむかしの人間であるせいか、西洋種の草花はあまり好まない。チューリップ、カンナ、ダリアのたぐいも多少は栽えるが、それに広い地面を分譲しようとは思わない。日本の草花でも優しげな、なよなよしたものは面白くない。桔梗や女郎花のたぐいはあまり愛らしくない。私の最も愛するのは、へちまと百日草と薄、それに次いでは日まわりと鶏頭である。

こう列べたら、大抵の園芸家は大きな声で笑い出すであろう。岡本綺堂という奴はよくよくの素人で、とてもお話にはならないと相場を決められてしまうに相違ない。私もそれは万々承知しているが、心にもない嘘をつくわけには行かないから、正直に告白するのである。