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がらくたがんぐ

我楽多玩具

岡本 綺堂

「新小説」1919(大正8)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,846 字 · 4 页

青空文庫

なぜこの八厘という端銭を附けるのか知りませんが、二銭五厘や三銭というのは決してありませんでした。天保銭がまだ通用していた故かも知れません。うす暗いカンテラの灯の前に立って、その縁日玩具をうろうろと猟っていた少年時代を思い出すと、涙ぐましいほどに懐しく思われます。

私の玩具道楽、しかも我楽多玩具に趣味を有っているのは、少年時代の昔を懐しむ心、それがどうも根本になっているようです。私が玩具屋の前に立った時、先ず眼につくのは旧式の我楽多玩具で、何だか昔の友に出逢ったような心持になります。実用新案の螺旋仕掛などには何の懐しみを有つことが出来ません。随って小児にまでも頭脳が古いと侮られますが、どうもこれは趣味の問題ですから已むを得ません。旧式の張子の仮面などを手に把ってじっと眺めていると、ひどく若々しい心持になる時と、何とはなしに悲しくなる時と、その折々に因って気分の相違はありますけれども、いずれにしても、その玩具を通して少年時代の夢を忍ぶことは、私に取っては嬉しいことです、堪らないほどに懐しいことです。大人でないと笑われても、私はこの年になるまで、我楽多玩具と別れを告げることは出来ません。