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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
貞世はうれしさに疲れ果てて夜の浅いうちに寝床にはいった。明るい電燈の下に葉子と愛子と向かい合うと、久しくあわないでいた骨肉の人々の間にのみ感ぜられる淡い心置きを感じた。葉子は愛子にだけは倉地の事を少し具体的に知らしておくほうがいいと思って、話のきっかけに少し言葉を改めた。
「まだあなた方にお引き合わせがしてないけれども倉地っていう方ね、絵島丸の事務長の……(愛子は従順に落ち着いてうなずいて見せた)……あの方が今木村さんに成りかわってわたしの世話を見ていてくださるのよ。木村さんからお頼まれになったものだから、迷惑そうにもなく、こんないい家まで見つけてくださったの。木村さんは米国でいろいろ事業を企てていらっしゃるんだけれども、どうもお仕事がうまく行かないで、お金が注ぎ込みにばかりなっていて、とてもこっちには送ってくだされないの、わたしの家はあなたも知ってのとおりでしょう。どうしてもしばらくの間は御迷惑でも倉地さんに万事を見ていただかなければならないのだから、あなたもそのつもりでいてちょうだいよ。ちょくちょくここにも来てくださるからね。それにつけて世間では何かくだらないうわさをしているに違いないが、愛さんの塾なんかではなんにもお聞きではなかったかい」