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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
どこにか春をほのめかすような日が来たりしたあとなので、ことさら世の中が暗澹と見えた。雪でもまくしかけて来そうに底冷えがするので、葉子は茶の間に置きごたつを持ち出して、倉地の着がえをそれにかけたりした。土曜だから妹たちは早びけだと知りつつも倉地はものぐさそうに外出のしたくにかからないで、どてらを引っかけたまま火鉢のそばにうずくまっていた。葉子は食器を台所のほうに運びながら、来たり行ったりするついでに倉地と物をいった。台所に行った葉子に茶の間から大きな声で倉地がいいかけた。
「おいお葉(倉地はいつのまにか葉子をこう呼ぶようになっていた)おれはきょうは二人に対面して、これから勝手に出はいりのできるようにするぞ」
葉子は布巾を持って台所のほうからいそいそと茶の間に帰って来た。
「なんだってまたきょう……」
そういってつき膝をしながらちゃぶ台をぬぐった。
「いつまでもこうしているが気づまりでようないからよ」
「そうねえ」
葉子はそのままそこにすわり込んで布巾をちゃぶ台にあてがったまま考えた。ほんとうはこれはとうに葉子のほうからいい出すべき事だったのだ。妹たちのいないすきか、寝てからの暇をうかがって、倉地と会うのは、始めのうちこそあいびきのような興味を起こさせないでもないと思ったのと、葉子は自分の通って来たような道はどうしても