轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
しかもあの柔順らしく見える愛子は葉子に対して生まれるとからの敵意を挟んでいるのだ。どんな可能でも描いて見る事ができる。そう思うと葉子はわが身でわが身を焼くような未練と嫉妬のために前後も忘れてしまった。なんとかして倉地を縛り上げるまでは葉子は甘んじて今の苦痛に堪え忍ぼうとした。
そのころからあの正井という男が倉地の留守をうかがっては葉子に会いに来るようになった。
「あいつは犬だった。危うく手をかませる所だった。どんな事があっても寄せ付けるではないぞ」
と倉地が葉子にいい聞かせてから一週間もたたない後に、ひょっこり正井が顔を見せた。なかなかのしゃれ者で、寸分のすきもない身なりをしていた男が、どこかに貧窮をにおわすようになっていた。カラーにはうっすり汗じみができて、ズボンの膝には焼けこげの小さな孔が明いたりしていた。葉子が上げる上げないもいわないうちに、懇意ずくらしくどんどん玄関から上がりこんで座敷に通った。そして高価らしい西洋菓子の美しい箱を葉子の目の前に風呂敷から取り出した。
「せっかくおいでくださいましたのに倉地さんは留守ですから、はばかりですが出直してお遊びにいらしってくださいまし。