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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
不眠で過ごした夜が三日も四日も続いているのにかかわらず、睡気というものは少しも襲って来なかった。重石をつり下げたような腰部の鈍痛ばかりでなく、脚部は抜けるようにだるく冷え、肩は動かすたびごとにめりめり音がするかと思うほど固く凝り、頭の心は絶え間なくぎりぎりと痛んで、そこからやりどころのない悲哀と疳癪とがこんこんとわいて出た。もう鏡は見まいと思うほど顔はげっそりと肉がこけて、目のまわりの青黒い暈は、さらぬだに大きい目をことさらにぎらぎらと大きく見せた。鏡を見まいと思いながら、葉子はおりあるごとに帯の間から懐中鏡を出して自分の顔を見つめないではいられなかった。
葉子は貞世の寝息をうかがっていつものように鏡を取り出した。そして顔を少し電灯のほうに振り向けてじっと自分を映して見た。おびただしい毎日の抜け毛で額ぎわの著しく透いてしまったのが第一に気になった。少し振り仰いで顔を映すと頬のこけたのがさほどに目立たないけれども、顎を引いて下俯きになると、口と耳との間には縦に大きな溝のような凹みができて、下顎骨が目立っていかめしく現われ出ていた。長く見つめているうちにはだんだん慣れて来て、自分の意識でしいて矯正するために、やせた顔もさほどとは思われなくなり出すが、ふと鏡に向かった瞬間には、これが葉子葉子と人々の目をそばだた