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あるせんきょふうけい
或る選挙風景
「新潮 第四八巻第七号」1951(昭和26)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,997 字 · 14 页
拙者は書くのが商売だから、いずれ文字に書けばすむことだ。第一、甚しく趣味に合わない投票をムリに行うことによって田舎の小ボスに対する反感を満足させようというタテマエなのだから、クツをぬぐのもツイデに我慢することによって一そう満足をはかるべきであると、胸をさすッて納得させましたね。生れついての物臭さのせいか、クツをぬいでまで投票しようなんてことは、ふだんなら、とても出来やしない。
ところが、驚いたことが起ったね。八三五〇票と七三五〇票だかの、丁度千票の大差でボスの方が問題なく落ッこッたのさ。まったくアベコベの結果であった。このボスは現県議でもあったし、県会は絶対多数党であり、中央の幹部は応援にくる、彼の本拠たる漁師町ではみんな彼に一票を投ずる筈であるから、殆どもれなく駆りだされて九割七分いくらという投票率だが、その本拠に於てすら彼は絶対多数を得ていなかったそうだね。私は、シマッタ! と思ったよ。イヤな思いをしてクツをぬぐには及ばなかったのさ。投票なんぞしなくとも溜飲が下ったのだ。
しかし、これは、どういうことだろうね。たしかに、これは全国的な現象ではないらしい。