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せんごしんじんろん

戦後新人論

坂口 安吾

「文藝春秋 第二七巻第一一号」1949(昭和24)年11月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,363 字 · 15 页

青空文庫

しかし保守思想というものは、こういうハツラツたるスポーツに於ても在るもので、先日読んだ野球雑誌に、日本野球のベストメンバーというのを見ると、一塁が川上でも西沢でも飯田でもなく、死んだ中河になっている。そして中河こそは不世出の一塁手で、生れながらのプロ野球人だなどと絶讃しているのである。

しかし私の記憶によれば、中河が生きて活躍していた当時は、守備に於てはすぐれているが、打撃が全然ダメであるからという理由で、当時ベストメンバーを選ぶ時には、そのころはまだプロ新入生の川上などが却って選に入り、中河をベストメンバーに加える人などは殆どなかったものである。今日は尚のこと打撃時代であり、彼のスマートな守備ぶりがいかほどプロ的であっても、あの貧打でベストメンバーにはいる筈はありえないのである。

老人のクリゴトというものは、いつもこういうものである。しかし現代に生きる観衆はハツラツと生命に溢れており、現実を観賞することが全てゞ、今日プロ野球が人気をさらっているのも、プロ野球に実力と生命がこもっているからであろう。

何よりも、職業人としての心構えの確立がプロ野球を今日あらしめたのである。