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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

かならず、約束を守るから、君も守ってくれ。暁葉子のためにも、わが社第一と考えてくれよ」

「ハ。わかりました」

そこで煙山は、安心して、東京へ戻った。敷島社長に以上の話をすると、上野光子の話がそこまで出来かかっている以上、ひくわけにはいかない。

「よろしい。約束通り、大鹿をとろう。今日の夕方までに五百万そろえておくよ」

「そうですか。カバンを持って、うけとりに来ますよ」

「君は今夜たつのかい」

「いえ、明朝たちます。夜汽車に金を運ぶのは危険ですし、上野光子にぶつかっても、まずいでしょう。朝の急行の一番早いの、七時三十分にたちます。九時発の特急ツバメが、おそく発車して早くアチラへ着くのですが、特急は知った顔に会いますから、わざと七時三十分にたちます」

「よかろう」

夕方まで時間があるので、小糸ミノリの家を訪ねて、暁葉子に会った。三百万円の契約がととのったムネを知らせると、安心して、涙ぐんでしまった。

「君も明日、京都へ行くそうじゃないか」

「ええ」

「あんまり、目立たないようにしてくれよ。何時の汽車だね」

「午後一時、東京発。京都へは夜の十一時ちかくに着くはずなんです。