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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

「実はな。大鹿のことでは、上野光子が引ッこぬきの話をもちこんでるんだ。上野光子は今夜の夜行で、京都へ行く筈だが、この引ッこぬきは金額の上で折合わなかったから、失敗するかも知れん。煙山がでかけるとすれば、これも大鹿ひきぬきだ。こッちが引ッこぬきに失敗したら、暁葉子のロマンスを素ッぱぬいてやれ。煙山をつけでみろ。そして、大鹿の愛の巣を突きとめておけ。煙山をつけて行けば、自然にわかるだろう。わかったな」

「ハ」

そこで木介は伝票をもらって、出張の用意をととのえた。

その二 一月十九日正午――一時

とある料亭の別室で、向い合って話しているのは、大鹿と上野光子である。

「桜映画じゃ、一流投手二三人引ッこぬきに成功したらしいのよ。それで、大鹿さんのこと、うけつけてくれないの。それで専売新聞にかけあったんだけど、どうしても、百万までね。まア、それが、ホントのところ、あなたのギリギリよ」

大鹿はむしろそれでホッとした顔だ。

「いえ、もう、その話は、いいですよ。どうも、お世話さまでした」

「アラ。アッサリしてるわね。やっぱり、ラッキーストライクがいいのね。暁葉子さんのいるところが」