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ピッチャーさつじんじけん
投手殺人事件
「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页
しかし、葉子に恋人があるという噂を小耳にしたのは、ようやく三日前だ。おまけに、その恋人が、職業野球チェスター軍の名投手大鹿だという。猛速球スモークボールで昨年プロ入りするや三十勝ちかく稼いだ新人王で、スモーク・ピッチャー(煙り投手)とうたわれている。
この話が本当なら宣伝効果百パーセントというところだが、あんまり話が面白すぎる。いゝ加減な噂だろうと思ったが、羅宇木介が執念深く葉子を探しているのに気がつくと、ハテナと思った。専売新聞はネービーカット軍をもつ有名な野球新聞だ。
細巻が部長室へはいると、若い部員がきて、
「暁葉子と小糸ミノリがお目にかかりたいと待ってますが」
「フン。やっぱり、本当か。つれてこいよ」
暁葉子はかけだしのニューフェイスだが、細巻がバッテキして、相当な役に二、三度つけてやった。メガネたがわず好演技を示して、これから売りだそうというところ。細巻もバッテキの甲斐があったといささか鼻を高くしていた矢先であったから、はいってきた葉子とニューフェイス仲間のミノリを睨みつけて、
「バカめ。これからという大事なところで、一ヵ月も、どこをウロついて来たんだ。