轻松读懂日语经典作品
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ぬきうちししべえ
抜打ち獅子兵衛
山本 周五郎
「講談雑誌」大日本雄辯會講談社、1940(昭和15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,930 字 · 24 页
門を入ると長屋の前をまっすぐに抜けて、中の木戸から庭へ入る、そこを鉤の手に曲ってさらに二つ木戸を通った後、泉石結構の豪奢な奥庭へ出た。
「腰の物をいかがしましょう」
左内は御殿に近寄ると見て云った。
「いや御遠慮なく、そのままどうぞ」
「それではかえって憚りです、お預りください」
「いや、お上の御意でござれば」
「でもどうぞ」
左内は大剣を脱って、藤兵衛の手に渡した。
敵にどんな考えがあるか知らぬが、高貴の側近へ出るのに、帯刀のままでいるのは作法でない。ここまで来るからは左内も覚悟は決めている、礼儀は礼儀としてあくまでも守る気だった。
「さようなれば、しばらくこれに」
そう云って、藤兵衛は去った。左内は広縁の下に、悠然と立って待った。……静かな日である。微風に乗って梅の香が匂う、庭いっぱいに、暖い陽が溢れて、じっとしていると眼蓋が重くなるような日和だ。
すると、その静かな庭上へ、にわかに人の気配がして、おおよそ十人あまりの若侍たちが現われた。みんな充分に身支度をして、木剣や稽古槍を持ち、ぐるりと左内を半円のなかに取巻いた。
無言である。左内は素早く眼を配ったが……兼て期していたことだから、驚く様子もない。