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おしえのきせき
押絵の奇蹟
夢野 久作
「新青年」1929(昭和4)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,749 字 · 114 页
この世の中に運命でないものは一つもない。ですから私はこの病気で死ぬものときまってはいないでしょう。
もしかすると今一度、不思議と健康な身体になって、あなた様にお眼にかかるような事がないとも限りませぬ。
そのような運命を知っておりますのはこの二つの押絵ばかり……その中でも、刀を振り上げている犬塚信乃と、琴を弾いている阿古屋の二人だけが、何もかもチャンと知っているので、その運命に、私のかよわい力が逆らおうとしても何の役に立ちましょう。
私はこうした運命の手に抱かれて、貴方様のお傍に参りましょう。そうしてお懐かしいお胸に縋って、今までの事をスッカリお打ち明けして、心ゆくまで泣かして頂きましょう。
それが私のホントの運命なのでしょう。
こんなような、七八つの子供が夢みますような、甘えた、安らかな気持ちになりまして、うつつともなくウトウトしながら上りの汽車に乗ったことで御座いました。
東京へ帰りつきますと、わざと、場末の名もないような小さな宿屋に泊りました。そうして前にも申上げましたように、そこであれから後の新聞を読んだので御座いますが、その記事の中でも、とりわけて身を責められました貴方様の御親切の程……それは私の肉体と心につき纏うております世にも恐ろしい、不思議な秘密のすべてを露わにしてお眼にかけましても、後