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しどうものがたり

指導物語

上田 広

或る国鉄機関士の述懐

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,687 字 · 35 页

青空文庫

いや云い合っているのではない。直接運転に携った二人の労苦を思うと、少しでも正確に近い消費量の数字を出して貰いたくなるのである。最近の私の成績を知っているのであろう、係の親爺(これは誰れもが好んで呼ぶ愛称である)は誘い込むように笑って、この頃は随分細かくなったが、やっぱり年齢のせいですかな、と云う。私も仕方なく苦笑しながら、儂もこれから真面目にやって、鉄道のお婿さんになろうと思っているのさ、と云ってやると、さすがの親爺もあきれたと見え、なるほどね、と云うきりであった。

成績は日毎に昇った。私は毎日帰ってくると手帳を取り出し、当日の使用量を、牽引した車輛数により一粁当りに割り出して見る。勿論当日の天候や機関車の具合によっていちがいにも云えないけれど、次第に向上的な数字の現われるのは事実である。私はその度に機関助士と佐川二等兵に見せながら、この調子ならじきにもとの成績にもどれるよ、と労わるのを忘れなかった。二人もすっかり気をよくしていたが、特に佐川二等兵の喜ぶさまを見るのが、私にはこの上ない楽しみであった。彼は別に大げさな態度を見せたり、愉快そうに笑ったりするわけでもない。