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すいりしょうせつろん

推理小説論

坂口 安吾

「新潮 第四七巻第四号」1950(昭和25)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,385 字 · 15 页

青空文庫

しかし「黄色い部屋」には新奇のトリックを狙いすぎて不合理があり、確実さや合理性に於てはルコックよりも退歩していると見てよい。これからあとは現代である。

「黄色い部屋」は密室殺人の元祖でもある。このトリックは簡単ではあるが、それだけ現実的でもあって、犯人は犯行が発見されたとき、鍵のかけられた密室の現場にいたのである。扉があけられたとき、扉の裏側にブラ下って隠れ、やがて見物人がきたとき、自分もその一人のフリをして、室内に現れていたのである。

密室はヴァン・ダインによって、糸を利用した工夫や、蓄音機を利用した工夫や、兇器を仕掛によって自然に室外に隠す工夫や、手を代え品を代えてトリックが施され、これは今日では常識となり、特に日本では濫用されすぎているようである。

だいたい推理小説というものは、トリックの新発明が主要な課題となり、これによって読者と智恵くらべをするものだ。読者は、又、作者と智恵くらべをたのしむに当って、従来のトリックを多く知るはど興味が深まるものであり、こうして従来のトリックをマスターしたアゲクには、自分もひとつ推理小説を書いて未知の友に挑戦したいと考える。