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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
石田の家の裏あたりでは一応完成しているように見える新道は、しばらく行って部落を出はずれ、製材所の在る辺から、次第に、粗雑な工事の弱点をあらわしはじめた。バラスが十分入れられていない赭土道が、乱暴なトラックの往来で幾条も車軸がめりこむほどの深さにほじくりかえされている。新らしい切通しの左側が崩壊して、大きい立木が根こそぎ道端まですべり落ちていた。左右に切通しの石だたみを見上げてその下を通りぬけるとき、ひろ子は恐怖を感じた。地盤のゆるんだ崖にはられている高い石畳みが信用出来ないばかりでなかった。人目の届かないその山の上で、どんな工事をしかけていたのか、巨大な石柱が横に赭土の中から、宙に突出たままにされていた。
切通しをぬけたところの谷間に、迷彩をほどこした二棟の飯場のような急ごしらえの建物が低く見えた。上の道の草堤に沿って、軍用トラックが八台、片方のタイヤを溝の中へおとして、雨ざらしのまま並べられている。
新道の風景は、一丁ごとに荒々しく、人間ばなれして見えて来た。
三方を低い山に囲まれた山懐の奥に、板のつき上げ窓が並んだ真新しい建物が四棟も建て捨てられてあった。