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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
そのすこし先に、発電所があった。そこは完全に爆破されて、廃墟になっている。道路ばたに、その発電所用らしい大きなモーターのようなものが厚いカンバス覆をかけられていくつも並べられていた。そのあたりは、右手がずっと工廠の灰草色の暗鬱な高塀だが、その高塀のところどころは崩れて、通行人の足もとまで松の樹がこけ出している。アスファルト大道と云うものの、その二十間道路の上には、どこもかしこも多量の泥が流れていて、勾配の計算が杜撰にされた証拠に、あるところでは、大水溜りがあった。
看板ばかりが大きい下宿屋、飲食店、あとは、××工務所出張所と云った風のバラック建が、大道路に向って並んでいる。八月十五日以来、これらのあらゆる箱の中から、利慾でうごめいていた人間の姿が消えた。ひろ子たちが歩いてゆく今、それらのある窓は板を釘づけにされたまま、或る建ものは看板をかけたまま空屋となっていた。前の歩道では、四五日前の暴風雨のせいか、それとも空襲のときにそうなったのか、根っ子をむき出してプラタナスの並木が数丁に亙ってなぎ倒されていた。倒れたままプラタナスの青葉は、泥によごれながら緑の葉をしげらせていた。