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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

自笑軒で、芥川龍之介の年忌の句会が毎年もよおされた。重吉が、はじめて発表した労作は、芥川龍之介の文学とその死とが語る日本の知識人の一つの歴史的転換についての究明であった。

ひろ子が、重吉のその論文の出ている雑誌を読んだのは、遠い外国の質素なホテルのテーブルの上であった。その時分のひろ子は、どんな気持で暮していただろう。そのようにして名だけを知った重吉が、こんなにとけこんで自分の生涯にない合わされて来ようと、思ってもいたろうか。重吉自身、若々しい精根をきざみこんでそれらの論文をかいていたとき、僅か三年後に牢獄の生活がはじまり、やがて無期懲役というような宣告が与えられようと、想像もしなかったであろう。

だが、もしかしたら、重吉は、あらゆる可能に向って用意されたこころもちで生きて働き、ひろ子を妻としていたとも思える。

かすかな風で葉のそよぐ大名竹の影絵を眺めながら、枕の上で大きく眼をあいているひろ子に、四月下旬の昼ごろの日光に照し出されたほこりっぽい公判廷の光景がよみがえって来た。

判決言渡しが予定されていたその日、午前十時頃から東京は小型機の編隊におどかされた。