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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
「十日までというから、仮に八日か九日網走を出るとして、東京に着くのは十三、四日でしょう。すぐ立たなくちゃ」
「福島へよってでありますまいか」
一時に、いろいろの可能が考えられ話し出された。そのどれもが、西から帰って行くひろ子と行きちがいそうに思えるのであった。
「ともかく東京まで帰りましょう」
最後に決心して、ひろ子が云った。
「東京に、連絡事務所が出来たらしいし」
重吉が依頼していた弁護士の一人の事務所が連絡所として発表されているのであった。
「はあ、すぐ駅へおかえりませ。今夜の汽車にでも乗れたら乗ることが。のう、あんた」
「じゃあ、ドーナッツ、持たせましょう。もうそれどころでないわ」
「それ、それ」
さわ子によろしくを言伝るのがやっとで、ひろ子は又縫子とつれ立って、家を出た。
来たときのとおりの道を、今度はこちらから歩いてゆく。ひろ子は、自分がどんなに物も云わず、出来るだけの速力を出し、むきになって歩いているか心付かなかった。ときどき縫子が、
「もうちとゆうに行きましょうか」
と、歩調をゆるめた。ひろ子は、それを従妹が自分の脚の速さを気がねするのだと、とった。