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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
目の前に幾台も汽罐車がひっくりかえっていた。車輪を空へ向けてすっかり腹を見せているのや、なぎ倒されたまま顛覆しているのや、焼け爛れてとけた鉄骨だけのこった貨車、客車が散乱していた。一台の自動車がふっとばされて来て、妙なごたごたの間に逆立ちして突こんだまま、そこで焦げ、エナメルがむけて錆びはじめている。
雨は小やみとなった。濡れるとも云えない軽い雨脚が、リュックにかかった。その板棧道には列車が停る側にきちんと一定の間隔をおいて、何ヵ所にも人糞が落ちていた。掃除もされず、そのまま雨に半ばとけかかっている。
西へ、西へと来て一夜あけたとき、ひろ子の周囲にあらわれた光景のすべては仮借ないものであった。
七
篠笹の藪と、すこしはなれた高くない山並の間の小駅で降りて、ひろ子は、駅前のひろ場へ出た。
右手に見なれた貨物置場がある。ダラダラと下ったところに往還が通っていて、向う角の消防ポンプ置場も、つき当りの呉服屋も、もとのままある。ひろ子は、安堵と一緒に哀愁を感じた。この前、ひろ子がこの小さい村の町に来たのは、直次に二度目の召集が来たときであった。