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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
日頃体のよわいつや子は、直次のいたときから、何かにつけ、どうせ長う生きられんのだから、と口に出した。
「間食させすぎると、きまったとき御飯たべなくなることよ。顔色のわるいのもそのせいかも知れないよ、十時と三時にきめたら?」
この辺は、食糧が乏しくはなって来ていても、まだ食事とお八つとを規則だてられる位はたっぷりしていた。つや子は、しかし深くききしめる様子もなく、
「はア」
と答え、
「ほんに、じらばかりいうて……」
寧ろひろ子への云いわけらしくつぶやいた。癇のきつい昭夫は、その癇を無意識のうちに鎮めてくれる男らしい人間的な圧力や生活の規律が女ばかりの暮しに欠けていることから、とめどなく荒っぽくなっているのであった。母と嫁とは、ほかに男のいない生活で左右から直次をとりかこんで暮して来た。そのように、今は癇のきつい昭夫のまわりを祖母と母とが左右からはさんで近づいては遠のき、一応口先で叱りつけては、あとで一層機嫌をとって暮している。
横になりながらひろ子は台所の騒ぎをきいていて、中心になる男が奪われた一つの家庭の不幸と生活の破綻というものの複雑なあらわれをしみじみと感じた。