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ぎたい

擬体

豊島 与志雄

「新潮」1952(昭和27)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,945 字 · 25 页

青空文庫

「まだ確かな証拠はないが、僕の眼に狂いがなければ、あれは日共の党員だ。少くとも党の同調者だ。そしてここで、何等かの情報を得ようとしているのだ。この頃本社では、諸会社の内情調査を主な仕事としてるものだから、それに関連した情報獲得の便宜もあるし、それから猶、警察予備隊だの、保安隊だの、僕の個人的な関係方面のことについても、知りたいニュースがあろうじゃないか。然し、彼女なんかにそう易々と尻尾は掴ませない。その代り、彼女の、いや日共の、尻尾を掴みたいものだ。君がその仕事をやってくれてるものだと、僕は思っていた。まだやっていないのなら、今からでも遅くはない、やってみないか。下らなく思われるような言葉尻だけでも充分だ。君と彼女の間柄なら、わけはないだろう。」

青木は顔が挙げられなかった。巻子には聊か自由主義者らしいところがあったが、まさか共産党員だとは思われなかったし、ましてやそのスパイだとは思われなかった。そして今、青木に提出されてる仕事は、スパイに対する逆スパイの行為だったし、而も色情を以てするそれだった。彼はウイスキーをあおった。

「君の淮河治水工事の話なんか、なかなか立派だったよ。