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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

こんな理窟を並べて読者諸君を退屈させては相すまん次第だが、こう云った事が後の事件にも多少関係があるので鳥渡申述べて置く。

兎に角、神戸牧師が支倉の殊勝な自白の事を聞いて、徒に興奮せず、又頭から支倉を憫然と思って感傷的な気持に溺れても終わず、十分理性を働かしながら、渋々と云ったような態度で支倉の懺悔の場面に立会ったのは、彼の性格の一面が覗われると共に、他日支倉の断罪に当って、有力な素因を造ったのだった。

それにしても神戸牧師は気の毒であった。彼はこの僅々半時間の支倉との面会の為に、後年数年の長きに亙って、云うべからざる不快な眼に遭わなければならなかったのである。支倉に会う事の気が進まなかったのは、蓋し虫が知らしたのであろうか。

机を前にして署長は悠然と肘付椅子に腰を掛けていた。それと並んだも一つの肘付椅子に神戸牧師が席を占めていた。傍には証人として喚ばれていたウイリヤムソンと云う外国宣教師が、当惑そうに眉をひそめながら普通の椅子に腰をかけていた。それだけでこの狭い署長室はいくらも余地がなかった。

めっきり春めいて来た午後の陽はポカ/\と窓に当っていた。