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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

数通を押収した。

捜索時間は約四十分だった。

それからその足で直ぐ古我判事の一行は貞子殺害の場所とせられている古井戸の実地検証を行って調書と共に詳細な図面を拵えた。調書中には次のような事が書かれていた。

一、同所より更に小林貞子を投入殺害したりとの古井戸の箇所に至るには前記支倉方居宅前の五反田桐ヶ谷に通ずる道路を南行して中丸橋を渡り進む事約三丁にして、東西に通ずる道路の交叉点に至る。之より左折して東方に入る事約三十間にして道路の左側に接し古井戸の存したる地点に達す。

一、立会人の申立つる所に依れば該井戸附近は旧時松、杉等の密林及び竹藪等の間少し許りの畑地を有するのみにして、該井水は番人小屋の飲用に供せられしも、其後次第に伐採開墾せられ大正二年頃は所謂池田の新開地と称し寂寥たる原野と化し、該井戸側は腐朽し周囲は棒杭を立て針金を引廻し僅に崩壊を防ぎ、大正三年十月浚渫の際まで其のまゝに放置せられ、発掘せる木根所々に散在し、井戸の傍に一条の小径ありて雑草中を南北に縦貫し居たりと云う。

この調書は中々の名文だ。一読草茫々たる原野中の古井戸を髣髴とせしめて、凄愴の気人に迫るものがある。