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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

か、察するに余りがある。

「おのれ、神戸牧師! 庄司に頼まれて、俺に有利な三本の手紙を隠したなっ」

支倉は再び忌々しそうに叫んだ。

翌日、彼は直ちに筆を走らせて神戸牧師にはがきを出した。

「神戸さん、アナタは牧師なら庄司とグルになって、私をいじめないで下さい。私の手紙を隠さないで下さい。三本の手紙を早く出して下さい。でないと私はあなたを告訴します」

大正八年二月七日に第一回公判を開いた第二審控訴院の審理は、同年五月三十日に既に四回の公判を重ねたが、其時に能勢弁護人より、

「被告支倉喜平は先日以来本件事実の真相を記録いたして居りまして、上巻だけは既に脱稿いたし、中巻は近日脱稿いたす筈で、下巻の脱稿には尚一ヵ月を要する由でありますから、右記録が全部脱稿致します迄、公判の延期を願いたいのであります」

と云う要求があった。そこで公判はそのまゝ延期となり、九月二十七日には聖書会社が私訴の取下げをした事実があった限りで、その年は暮れて終った。

大正九年二月二十日第五回公判に於て、能勢弁護士は支倉が獄中で細々と認めた記録上中下三巻六冊を参考書類として差出した。裁判長は列席判検事と一閲の上、追って熟読すべしと云って分厚の書類を請入れたが、之ぞ後に公判のある毎に支倉が風呂敷包みにして出廷の際肌身を離さなかったと云う大部の書類で