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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
(以下前同文)
大正十一年十月二十五日
「前同文大正十一年十月二十七日」
僅に一ヵ月の間に神戸牧師の宅に飛び込んで来た支倉の呪のはがきは六本を算した。彼は苦笑いをしながら眺めるより仕方がなかった。
が越えて大正十二年一月元旦には支倉からこんな手紙が舞込んで来た。
「恭賀新年
庄司利喜太郎と心を協せ山々の書類を隠し、偽証、喜平を無実の罪に陥いれたる神戸氏の御健康をお祈りいたします。
書類を隠し偽証に出で無実の罪に陥いれられている未決七年
冤枉者 喜平」
このはがきを読んだ時には流石の神戸牧師も、彼の執拗な悪意に悲憤の涙を呑んだ。
が、何がかくまで支倉を悪化させたか。
彼は事実彼の主張する如く冤罪者だったか。もし果して然りとせば、云い解くに道なく、六年の長きに亙って、監獄に繋がれていれば世を呪い人を恨み、或いは嘆き或いは憤るのは蓋し当然である。よし事実犯せる罪であっても、六年の長きに亙って、冤罪を怒号し咆哮し続けているうちに、いつか彼は自分が無実であったかのように固く信ずるようになったかも知れぬ。加うるに彼の性質は既に拗け、剛腹で執拗であるから、長き牢獄生活に次第に兇暴になったのは敢て不思議ではない。