轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

――寒むくなるから……――と云って、八端のドテラをかたみに置いて東京をたってしまった。

私は朝から何も食べない。童話や詩を三ツ四ツ売ってみた所で、白いおまんまが、一ヶ月のどへ通るわけでもなかった。

お腹がすくと一緒に、頭がモウロウとして、私は私の思想にもカビを生やしてしまった。

あゝ私の頭にはプロレタリヤもブルジョアもない。たった一握りの白い握り飯が食べたい。

いっそ狂人になって街頭に吠えようか。

「飯を食わせて下さい。」

眉をひそめる人達の事を思うと、いっそ荒海のはげしい情熱の中へ身をまかせようか。

夕方になると、世俗の一切を集めて茶碗のカチカチと云う音が下から聞えて来る。グウグウ鳴る腹の音を聞くと、私は子供のように悲しくなって、遠くに明い廓の女郎達がふっと羨ましくなった。

沢山の本も今はもう二三冊になって、ビール箱には、善蔵の「子を連れて」だの「労働者セイリョフ」直哉の「和解」がさゝくれてボサリとしていた。

「又、料理店でも行ってかせぐかな。」

ちんとあきらめてしまった私は、おきやがりこぼしのように変にフラフラした体を起して、歯ブラシや石鹸や手拭を袖に入れると、風の吹く夕べの街へ出た。