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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

」

私も、派出婦って、いかにも品物みたいな感じのするところよりその方がいゝと思ったので、一ヶ月三十五円で、約束してしまった。

紅茶と、洋菓子が日曜の教会に行ったように少女の日を思い出させた。

「君はいくつですか?」

「廿一です。」

「もう肩上げをおろした方がいゝな。」

私は顔が熱くなった。

卅五円毎月つづくといゝな。だがこれも当分信じられはしない。

母は、岡山の祖母がキトクだと云う電報を手にしていた。私にも母にも縁のない祖母さんだが、たった一人の義父のお母さんだし、これも田舎で、しょんぼりと、さなだ帯の工場に、通っている一人の祖母さんが、キトクだと云う。どんなにしても行かなくてはいけない。九州の父へは、四五日前に金を送ったばかりだし、今日行ったところへ金を借りに行くのも厚かましいし。

私は母と一緒に、四月もためているのに家主のとこへ行く。

拾円かりて来る。沢山利子をつけて返えそうと思う。

残りの御飯を弁当にして風呂敷に包んだ。

一人旅の夜汽車は佗しいものだ。まして年をとってるし、さゝくれた身なりのまゝで、父の国へやりたくはないが、二人共絶体絶命のどんづまり故、沈黙って汽車に乗るより仕方がない。